テレンス・マリック監督作品「名もなき生涯」が2020年2月21日に公開されます。

戦後70年以上たった「今」を生きる私たちに、

一人の男が生涯を通して伝えたいメッセージとは何なのでしょうか…?

では早速、「名もなき生涯」のキャスト(登場人物)やあらすじなど見ていきましょう。(ネタバレなし)

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映画【名もなき生涯】の作品情報

©2019 Twentieth Century Fox
制作年(国名) 2019年(アメリカ・ドイツ共同制作)
公開日 2020年2月21日
上映時間 173分
ジャンル ヒューマンドラマ
監督 テレンス・マリック
主要キャスト アウグスト・ディール
ヴァレリー・パフナー
ミカエル・ニクヴィスト
ユルゲン・プロホノフ
マティアス・スーナールツ
ブルーノ・ガンツ
配給会社 Twentieth Century Fox

映画【名もなき生涯】のロケ地

©2019 Twentieth Century Fox

イェーガーシュテッター家は、ドイツとの故郷に位置する、オーストリア北部ザンクト・ラーデグントという人口500人の小さな村に住んでいました。

撮影は、イタリアの南チロルで24日間、オーストリアのザンクト・ラーデグントで数日間行われました。監獄のシーンは、ドイツのツィッタウとベルリンで14日行われたそうです。

この映画のサブテーマは「自然そのものと、自然の中の環境」
美術監修のスティーブ・サマーズギルは、教会、聖堂、本物の家畜のいる農場、果樹園、山腹、平原、田舎道に及び、長期間にわたるロケハンを行ったそうです。

フランツが暮らした、美しくも刹那を感じる自然と、家族の様子がよりリアルに表現されたのではないでしょうか。

映画【名もなき生涯】の主題歌

ザンクト・ラーデグントを表現するにはオーケストラが一番良いということで、ヴァイオリン奏者、ジェームス・イーネスの独奏「A hidden life」(原題)が使われています。

この曲は、劇中の音楽を集めたCD「A Hidden Life (Original Motion Picture Soundtrack)」に収録されています。(日本発売:2019年12月13日)

フランツとファニの絆を表したこの曲から、2人の心細さや、悲しさも感じられます。

映画【名もなき生涯】の評価

3.7/5

予告編・予告動画

『名もなき生涯』オンライン予告編

作品概要

「シン・レッド・ライン」や「ツリー・オブ・ライフ」の監督として有名で、カンヌ・ベルリン・アカデミーを制した生きる伝説テレンス・マリック。46年間もの間、映画監督を務めてきた彼が今回初めて挑戦したのが、実話映画化です。

第二次世界大戦当時、ドイツに吸収されたオーストリア。そのオーストリア北部にある小さな町の農夫「フランツ・イェーガーシュテッター」の生涯を刻んだこの作品は、2019年カンヌ国際映画祭にてエキュメニカル賞を受賞しました。この賞は、「人の内面を豊かに表現した作品」に送られる賞です。
ナチスへの忠誠を頑なに拒み、自らの信念を貫いた男のヒューマンドラマが、この冬、日本にやってきます

主役のフランツ・イェーガーシュテッターを演じたのはドイツ出身の俳優アウグスト・ディールです。妻のファニを演じたのはオーストリア出身の女優ヴァレリー・パフナーです。

登場人物(キャスト)

フランツ・イェーガーシュテッター/アウグスト・ディール(August Deihl)

この物語の主人公。第二次世界大戦時、オーストリアがドイツに併合され自身の意思に反し、軍への招集命令が下ってしまう。ナチスへの忠誠を決して誓わなかったフランツは投獄される。

ファニ(フランチスカ)・イェーガーシュテッター/ヴァレリー・パフナー(Valerie Pachner

フランツと恋に落ち、妻となる。最後までフランツを信じ、必死に3人の子どもを守る。

レジー/マリア・シモン(Maria Simon)

ファニの姉。フランツが兵役を拒んだことを非難する。

ルーベン判事/ブルーノ・ガンツ(Bruno Ganz)

ブルーノ・ガンツさんは、この映画がアメリカで公開された2019年12月13日の3日後の12月16日に大腸ガンで亡くなりました。77歳でした。

ヘルガー大尉/マティアス・スーナールツ(Matthias Schoenaerts)

映画【名もなき生涯】のあらすじ(ネタバレなし)

フランツとファニは、オーストリア北部の小さな農村ザンクト・ラーデグントで暮らしていました。時は第二次世界大戦、ドイツがオーストリアを併合したことによって、1940年、フランツは軍事訓練に招集されます。

幼い子どもと、妻のフェニを自宅に残したまま長期間の訓練を強いられることになったフランツ。訓練中、絶えず手紙をくれるフェニに対し「国に何が起こっているんだ?」と不安をつづった手紙を返信するようになります。フランツはナチスの動向を怪しいと感じ始めていました。

ついに、長い訓練が終わり、家に帰ることとなります。平穏な生活を送っていたフランツですが、戦火は収まるどころか、日に日に大きくなっていきます。村の男たちは、いつ軍に招集されてもおかしくない状況でした。しかし、敬虔なキリスト教徒であるフランツは「罪のない人を殺すことはできないので、兵役を断りたい」という気持ちを持っており、それを村の神父に相談します。それを聞いた神父は、フランツを司教のもとへ連れてきます。

司教はフランツに、「これは祖国への義務である」と諭しましたが、フランツの信念は変わりません。それは妻のファニも同じでした。

1943年3月2日、フランツはエンス基地に出頭します。ヒトラーと第三帝国への忠誠宣誓を拒絶し、即時逮捕されます。独房に収監されたフランツは執拗な尋問と孤独に耐えていました。

1943年5月4日、ベルリンの拘置所に移送されたフランツ。そこでは、ファニからの「負けちゃダメ。善人は勝つと信じなきゃ」という手紙が唯一の励みでした。しかし、村に残るファニにも辛い現実が待っていました。国に抵抗し続けるフランツ一家は、村八分にされてしまったのです。

1943年7月、帝国軍事法廷での裁判で、フランツに死刑の判決が下されます。
ベルリンに駆け付けたファニはと弁護士は、フランツとの面会が許されます。自分の命より大切な信念を持つフランツにファニはどんな言葉をかけたのでしょうか。

映画【名もなき生涯】のココが見どころ↓

自然の美しさとリアリティ

©2019 Twentieth Century Fox

この映画の見どころ、といえば第二次世界大戦時の話でありながら、「激しい戦闘シーン」はなく、
徹底的に「自然の美しさ」追及している、ということではないでしょうか。

この映画の撮影は、実際にフランツが暮らしたザンクト・ラーデグントの家や、近隣の農家の家でも行われました。

その他にも、イタリアの南チロルでの撮影があり、セイス・アム・シュラーンの聖ヴァレンティン教会(church of St. Valentin in Seis am Schlern)やラジェンのアルビオン牧草地(the meadows of Albions in Lajen)などで行われました。山間部の静かで、美しい森に囲まれた場所です。

美術監修のセバスティアン・クラヴィンゲルはフランツが残した手紙や資料を元に、これらの場所を一年以上かけてロケハンを行ったそうです。その季節に合った景色を見るためにかけた多くの時間が、映画全体にリアリティを与えることに成功しています。

この映画を試写会などで既に鑑賞した人の感想を見てみると、「とにかく景色が美しい」という意見が多く見られました。その秘訣は撮影方法にあるそうです。次の節で紹介します。

マリック監督は本物の環境での撮影にこだわったそうで、役者たちは当時の人々が使った、大鎌を使いこなせるよう練習もしたという撮影の裏側があります。また、映画内で使われる音楽も抜かりはなく、村の教会の鐘、牛や羊の鳴き声、製材所の音、刑務所の音、畑の草刈りなどの環境音を音楽に重ね合わせたそうです。

(実は、アドルフ・ヒトラーの出生地もザンクト・ラーデグントがある、オーバーエスターライヒ州に属しています。ヒトラーは、オーストリア人として生まれ、1932年にドイツ人の国籍を取得しました。)

自然光での長回し撮影

©2019 Twentieth Century Fox

マリック監督の映画の撮影スタッフとしては常連のイェルク・ヴィトマー氏。マンネリを嫌うマリック監督を支えてきたのが、ヴィトマー氏です。

マリック監督とヴィトマー氏は「よほどのことがない限り照明は使わず、極力自然光を使う」と決めていたので、天候に左右されながらも時間もかけて撮影していったそう。しかし、天気は思い通りにいかないこともあります、やむなく照明器具を使うなど、照明方法を変える際はかなり気を使い、何度も何度もチェックしたそうです。

極めつけは、暗い監獄での撮影も自然光を使ったことです。窓が少ないうえに小さい監獄内では、わずかな光も無駄にはできません。撮影には、レッド社のデジタルスチールモーションカメラ「エピック・ドラゴン」という6K対応の機材を使ったそうです。

※撮影はフランツが投獄されていたテーゲル刑務所ではなく、ホーエンエック刑務所で行われました。ホーエンエックは、シュタージと呼ばれた、東ドイツ秘密警察(正式名:国家保安省)の管轄下にありました。シュタージは国民を国の監視下に置き反乱分子と決めつけた者には、非人道的な方法で罰を与えていました。

今も生きる家族

©2019 Twentieth Century Fox

この映画の撮影にあたり、マリック監督はフランツ・ファニ夫婦の3人の娘、マリア、ロザリア、アロイジア(ファニは2003年に亡くなっている)に映画製作に協力してもらえるよう頼んだそうですが、3人を含めイェーガーシュテッター一族は酷く傷ついたそうです。

それもそのはずで、どんな色を付けてフランツを失った悲劇を描かれるか分からないうえに、上映されれば批判も受けることになります。宗教間・民族間の不和はなくならない現代で、一思いに「YES」といえないのは当たり前であると感じてしまいます。

そのため、仲介人を通し懇談会を開き、一族に納得してもらえる方法を必死に探ったそうです。

その結果一族は撮影を承諾し、撮影の最中もずっと協力してくれたんだそう。

感想・レビュー・口コミ

この映画は、一般的な戦争映画ではなく、また宗教的な映画でもない。
しかし、夫婦二人が敬虔なキリスト教徒であること、フランツが神父や司教からも「祖国への義務」と称して兵役を受けるよう諭されたこと、はこの映画を考える上で重要なポイントのように思えます。

「フランツという一人の人間の愛や信念」というテーマで、ブレることなく描かれたこのストーリーは、一回の鑑賞だけで理解できるような、簡単なものではないような気がしています。


↑挿入曲をダウンロードして聴いてみましたが、ヴァイオリンの戦慄が本当に美しいです。同時にこの先何かが起こりそうな怖さや、焦燥感、悲しさを感じられます。


↑戦争やナチスを描いた映画というのは数えきれないほどありますが、この映画は日本人の目にどう映るでしょうか…。

https://twitter.com/yukareeeeeMatt/status/1224864290340884480
↑ファニの覚悟も並大抵のものではありませんよね。時代は背景を考えると特にそう感じます。

まとめ

ここまで映画「名もなき生涯」のキャスト(登場人物)やあらすじなど紹介してきましたが、いかがだったでしょうか?

テレンス・マリック監督が手掛けた映画の中でも、最高傑作であるとの呼び声高いこの作品。
是非ご自身の目で確かめてみてはいかがでしょうか。

ではまた次回!

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