1997年に公開されたスタジオジブリ作品「もののけ姫」。
それから時が流れた2016年のある日。
とある集まりで、宮崎監督は「もののけ姫」がハンセン病患者をモチーフにしていたことを認めたのです。
ここでは「もののけ姫」で描かれたハンセン病患者について。
また、彼らが登場した理由やエボシ御前の知られざる役割についても言及していきます。
ハンセン病とは?「もののけ姫」以外にも同病を扱った映画が存在
「もののけ姫」との関係を見る前に、まずハンセン病について知っておきましょう。
ハンセン病とは古文書にも残るほど古くから存在し、人々に恐れられてきた病気。
これは「らい菌」と呼ばれる菌によって引き起こります。
主な症状は手足などの神経が麻痺してしまったり、皮膚のただれなど。
早期に治療しないと感覚をなくしてしまうこともあるそう…
さらには指が変形してしまったり、顔が変形するといった後遺症も存在するとのこと。
日本では1907年から国の意向としてハンセン病患者を隔離しました。
治療法も確立されておらず、戦争中に国力を失うことを恐れての隔離策だったのです。
隔離したことによって「本当に恐ろしい病気なのでは」と偏見が強まってしまいました。
それによってハンセン病患者は仕事に就くことはおろか、学校に通うこともままならない状態に…
さらに感染拡大防止の目的で子供を授かることもご法度だったとされています。
らい菌はとても感染力が弱かったにもかかわらず、症状が見た目に現れてしまうことから過剰に恐れられました。
日本がハンセン病患者隔離の法律を廃止したのはなんと1996年。結構最近のことだったのですね。
今となっては新たにハンセン病にかかる方はほぼいません。
療養所にいる人々もほとんど完治しているそう。
しかし一部に残る昔の印象によって、帰る家のない人が大勢いるのも事実…
ところで、ハンセン病患者に焦点を充てた日本の映画があるのをご存知でしょうか。
それは「あん」というタイトルの映画。
故・樹木希林さんが生涯最後に臨んだ主演映画として話題になりました。
何故なら彼女が演じた主人公。それは、ハンセン病の経歴を持つ人物だったからです。
そういう意味では「もののけ姫」よりも更にハンセン病患者について表現された映画になっています。
一度ご覧になってみてはいかがでしょうか。
「もののけ姫」でエボシがハンセン病患者に与えたもの
そもそも「もののけ姫」の中に描かれたハンセン病患者とは、一体誰のことを指すのか?
彼らはエボシ御前が統治するタタラ場にいました。
ここはエボシがアシタカを連れてきた秘密の場所で、中では石火矢という武器が作られています。
作業する人々は皆全身に包帯を巻いて、目だけが出ている状態でした。
そう、彼らこそ「もののけ姫」で描かれたハンセン病患者だったのです。
現代ではハンセン病の治療法も見つかっていますが「もののけ姫」の時代ではまだ発見されていませんでした。
そのため、タタラ場の中でも別の小屋に隔離されていたのでしょう。
武器を作るために手を動かしたり、エボシと談笑する姿は普通の人と全く変わりありません。
しかし「長(おさ)」と呼ばれる男性はかなり重症。
顔面も全て包帯を巻き、寝たきり。声を出すのもやっとです。
長はエボシが自分たちにとって特別な存在だとアシタカに訴えました。
エボシだけが腐ってしまった身体を拭いてくれたり、包帯を変えてくれた。
自分たちを「人」として扱ってくれた、唯一の存在なのだと。
ハンセン病患者がそれまでどんな扱いを受けてきたのか、考えさせられるセリフですね。
「もののけ姫」の中でエボシは一見悪役のポジションに感じられますが、そうではありません。
エボシは彼らを差別することなく、仕事も与え、人として生きられる社会・環境を作ったのです。