宮崎駿監督の引退作品とされる「風立ちぬ」。
上映会では宮崎監督も涙を流すほどの作品で、話題になりましたね。
主人公の二郎の夢を追いかける姿と、ヒロインの菜穂子が病気に負けず懸命に生きようとする姿がとても印象的な作品です。
「風立ちぬ」の後半、菜穂子は二郎に黙って病院のある山へ帰ることに。
せっかく二郎と結婚できたのに、また山へ帰る選択をした理由とは一体何なのでしょうか?
「風立ちぬ」の登場人物たちの気持ちをしっかり考えていきましょう。
「風立ちぬ」のヒロイン、菜穂子が山で治療を受けていた理由
菜穂子が山へ帰ることを決めた理由を探る前に、そもそも彼女はなぜ山にいたのでしょう?
「風立ちぬ」のヒロイン、菜穂子は資産家の一人娘で、絵を描くのが趣味。
関東大震災の時に助けてもらった二郎をずっと想っていた彼女の前に、彼が再び現れたのです。
彼女は気持ちを抑えることなく、まっすぐに二郎を愛しました。
菜穂子は結核を患っており、それを理由に親は結婚を渋っていました。
しかし2人の覚悟が伝わり、婚約に至りました。
ところがその後、発熱したり吐血してしまったり、病状は悪化。
菜穂子は二郎と生きるために山の病院に行って本格的な治療を始めると決意したのです。
「風立ちぬ」の舞台となった1920~30年代では結核の治療は難しいものでした。
特効薬がない中でできる治療は、高緯度で綺麗な空気の場所で安静にしているしかなかったのです。
「風立ちぬ」でも、山の上の病院で寒空の下、患者たちが毛布に包まれながら寝ていましたね。
しかし菜穂子は、このまま死ぬのであれば二郎のそばにいたいという理由で病院を飛び出し、彼の元に向かったのでした。
菜穂子はなぜ黙って山へ帰ることを選択した?「風立ちぬ」で描かれなかった理由とは
二郎の上司である黒川に菜穂子を紹介し、黒川夫妻に仲人となってもらって結婚をしました。
ところがある日、菜穂子は二郎に別れを告げずに山へ帰ることを選択したのです。
山へ帰る理由とは、一体何だったのでしょうか?
結婚後も2人は一緒に黒川家の離れで生活していました。
しかし二郎は仕事が佳境に入っておりとても忙しく、仕事優先の毎日。
一方の菜穂子は毎日布団に寝たきりの状態。
少しでも彼女のそばにいてやりたいと考えた二郎は、夜は家で仕事をすることに。
布団の中の菜穂子と手を繋ぎながら設計図を描く姿がとても印象的でした。
タバコを理由に手を離そうとする二郎でしたが、1秒でも一緒に居たい菜穂子は「ダメ」とわがままを言います。
そんな2人のやりとりがとっても愛おしい・・!
「風立ちぬ」では2人が愛し合ってるんだなぁと感じられるシーンが多いのも印象的ですね。
2人はこのまま静かに、幸せに暮らしていくのかと思いきや・・
菜穂子が理由も告げずに突然、1人で山へ帰る行動を取ったのです。
残されたのは3通の手紙だけ。
黒川夫妻へ、加代(二郎の妹)へ、そして二郎へ。
「風立ちぬ」の中ではそれぞれ手紙の中身までは明らかになっていません。
もしかしたら手紙の中に山へ帰る理由が明記されていたかもしれませんね。
本人にしかわからない理由で、彼女は山へ帰る選択をしたのです。
ちなみに、山へ帰ることなく自殺をしたという説もあります。
理由も含めて「風立ちぬ」に関するこちらの記事で紹介しています。
⇒【閲覧注意】風立ちぬの菜穂子、死因は病気ではなく自殺だった!? はこちら
菜穂子が山へ帰るのを止めなかった黒川夫人の考え
彼女は理由を告げないまま山へ帰ることを決めました。
二郎の妹の加代は彼女をとても慕っていました。
ですので、なぜ黙って山へ帰ることにしたのか理由を知りたくて、急いで探しに行こうとしました。
しかし、黒川夫人に止められます。
黒川夫人も、もちろん彼女が山へ帰ることを悲しんでいましたが、
「女性として綺麗な部分だけ、愛する人に見てもらいたかったのね」
と呟きました。
このセリフこそ「風立ちぬ」最大の謎、菜穂子が山へ帰ることを選んだ理由に結びつくのではないでしょうか。
彼女は体調が優れないながらも、二郎に心配をかけたくない、綺麗な姿を見て欲しいと想っていました。
そこで毎日化粧をして紅をさし、少しでも顔色がよく見えるように努力していたのです。
ちなみにそのことは加代も気がついていました。
「風立ちぬ」で二郎だけが彼女の努力に気がついておらず、
加代は「菜穂子さんを傷つけないで!」と二郎に説教をしていました。
「風立ちぬ」を通して見えてきた二郎の性格は、
とにかく自分のやりたいことに熱中しまくって人の話が全く耳に入らなくなる。
美しいものにしか惹かれないという性格。
それを「風立ちぬ」で表していたのは、食事中にサバの骨のカーブの美しさに見惚れてしまったシーンでしょう。
そんな彼の側にいる女性ならば、「美しくなければ捨てられてしまう」と不安が生まれるのも当然。
これから病気が進行すれば益々身体は痩せ細り、血を吐いて醜くなってしまう。
そんな姿を彼に見られたくないと思って山へ帰る決断をした、ということが理由の1つとして考えられるでしょう。
まとめ
「風立ちぬ」での切なすぎる別れと、その理由についてご紹介しました。
二郎を想い続けながらも山へ帰ることにした菜穂子。その理由は女性ならではの考えだったのですね。
事実、二郎は風立ちぬの中でよく「綺麗だ」という言葉を彼女にかけていました。
嬉しい言葉ではありますが、逆に綺麗でなければ彼の目には入らないとも解釈できます。
そんな不器用な彼をまるごと愛そうと決めた菜穂子の包容力と覚悟は、相当なものだったのでしょう。